ジュリエットに愛の花束を。
「じゃあ、お兄さん帰ってきたんだし、もう帰るな。
……お兄さん、留守中に図々しく上がりこんじゃってすみませんでした」
また前みたいに樹を無視とかしたら怒ろうと思って眺めていると、お兄ちゃんは意外にも樹と向き合って小さく頭を下げた。
「いや。色々面倒かけて悪かった」
拍子抜けした樹が、「いえ、じゃあ」と言って、あたしに微笑んでから部屋を出る。
トントンという樹の足音を聞いていると、お兄ちゃんがあたしをじっと見ている事に気づく。
「なに?」
「椎名と仲直りしたのか。今まではケンカしたら仲直りするのが面倒でそのまま別れてたのに」
「それは昔の話でしょ。それに、別にケンカしてたんじゃ……」
いや、してたって言えばしてたけど。
だけどその経緯を説明するのが面倒で、話題を変えてみる。
「そういえば、松永との事も、色々凹んでた事も、もう全部解決したから」
あたしの言葉に、お兄ちゃんは少し驚いた表情をしてたけど、すぐに笑顔になった。