ジュリエットに愛の花束を。
【第十章】
樹の正体
そして、体調もよくなった翌週水曜日。
講義が終わったあたしを、樹が部活をサボってまで連れてきた場所は……。
「『RBP』……って、『ルーツ,B,プロダクト』?!」
目の前にそびえ立つビルを見上げながら、思わず声を上げた。
10階はあるだろう高さに、そのビルの横には工場らしきものまであって……敷地が計り知れない。
名前は聞いた事はあったけど、こんなに大きい会社だったなんて……。
薄いグレーで統一されているコンクリート造りの建物の周りには、たくさんのけやきの木があった。
やっぱり飲料メーカーだし、口に入るものだから会社自体にも清潔感を意識して……っていうか!
「なんだ、瑞希知ってたんだ」
「知ってるも何も……お兄ちゃんが勤めてる会社だし」
「え、マジで?」
コクンと頷いて、もう一度目の前の建物を見上げる。
16時っていう半端な時間だからか、出入りする人はそんなにいない。
それでも、自動ドアの前なんかで立ち止まっているからか、視線が刺さる。