ジュリエットに愛の花束を。



「っていうか、なんでこんなところに……」

「ああ。俺、来年からここで働く事になったんだよ。

話したろ。いい条件で受け入れてくれる会社が見つかったって」


何でもないように言う樹に、思わず声を失って……。

でも、「着いてきて」なんて言って樹が歩き出すから、急いでその後を追う。


樹は我が物顔で自動ドアから社内に入ってっちゃって、あたしはおどおどしながらその後に続いた。

広いロビーがあたし達を迎え入れて、受付嬢が2人してあたし達を見ていた。


「ねぇ、いいの? 入ってきちゃって……。

っていうか、あたしも樹も普段着だし。あたしはともかく、就職が決まってる樹はスーツとかで来るべきなんじゃ……」

「大丈夫だって。ちょっと待ってろ」


不安を隠せないあたしをそうなだめてから、樹は受付嬢に話しかける。



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