ジュリエットに愛の花束を。
そんな疑問を浮かべた後、これから待ち構えてるであろう事態に目を向ける。
お兄ちゃん、また門の前で待ち構えてたらどうしよう。
もう、一度門限破ってるし。
あの時はアリサさんが上手いこと言ってくれたからよかったけど、今回は……。
「樹、一緒にこなくていいからね」
タクシーの後部座席で窓の外を眺める樹に言うと、樹はあたしを振り向いて眉をしかめた。
「なんでだよ。じいちゃんのせいで遅れたんだから、俺が謝るべきだろ」
「でも……絶対にお兄ちゃん、樹に失礼な事言うし。
見てて嫌なんだよね。樹が悪く言われるの……」
と、そこまで言ってから口を塞ぐ。
飲んでないのに、匂いだけで酔いが回ったのかな。
なんかうっかり素直な事言っちゃったし。
気付かれてないといいなーと思いながらチラッと樹を見ると。
満足そうな笑顔を返されて、ばっちり聞かれてた事が分かって気まずくなって目を逸らす。