ジュリエットに愛の花束を。
「別に平気だから気にすんな」
そう言ってあたしの頭を撫でる樹。
その顔を眺めて……思い出した事を口にする。
絶対にからかってやろうと思ってたのに、すっかり忘れてた事。
「そういえば、樹ってばそんなにあたしの事真剣に考えてたんだね」
「……」
「しかも、逃がさないように親公認にしたりして」
いじめるつもりで言うと、樹は意外にも真面目な顔であたしを見た。
すれ違う車のライトが、樹の横顔を流れていく。
「嫌だった?」
それだけ聞かれて……答えに迷う。
それは、いつもみたいな素直じゃない言葉を選ぶのか。
それとも……苦手分野の方を選ぶのか。
「瑞希?」
後者を取ったあたしは、樹をじっと見てぼそっと言う。
「好きな人にそこまでされて、嫌な女がいるわけないじゃん」