ジュリエットに愛の花束を。
今、『実は樹が会長の孫で……』なんて切り出したら、絶対にキレそうだし。
「以後、気をつけます」
そんな考えから、控えめな言葉に留まる。
頭を下げるあたし達に対して、お兄ちゃんはというと。
リビングのソファに足を広げて座って、あたし達を見下ろしていた。
2人でいる時には、こんな嫌な気持ちになったりしないのに。
いいお兄ちゃんだなーなんて思ったりするのに。
やっぱり樹を毛嫌いするお兄ちゃんを見るのは、面白くない。
「椎名。……門限も守れないような奴と瑞希を付き合わせる訳にはいかない。
別れてくれ」
面白くなくたって、一応ここは我慢して……。
なんて思ってたあたしの耳に突如飛び込んできたお兄ちゃんの声。
その声に、我慢なんて言葉はあたしの中から消滅する。
「なにそれ……っ。頭下げて謝ってるじゃん! しかもわざわざ怒られるの承知でうちにまで来てくれたんだよ?!
そんな樹にその態度?! おかしくない?
それに今日は遅れても仕方のない理由があったんだから!」