ジュリエットに愛の花束を。


「だからっ、それは昔の話で、今は……っ」

「ホテルに行ってから「やっぱり無理!」って電話かけてきた事だって何度もあるだろ! その度に俺がホテルの部屋まで乗り込んで……っ!

忘れたとは言わせないからな!

俺が相手の男と殴り合いになった事だってあったの、覚えてるだろ!」


お兄ちゃんの言葉に……そーっと隣の樹の様子を盗み見る。

そっと見たハズなのに、ばっちり目が合って。

樹の冷めた瞳の中に、怒りがメラメラ燃えてるのが見えそう……。


「……無茶したい時期って、誰にでもあるじゃん?」

「へぇ……」

「ほら、樹だって、麻衣ちゃんと人には言えないデートをしたでしょ?」

「それ、違う意味でだろぉが! 

人に言えないのは『麻衣ちゃんと』って部分だけで内容的には古人も驚くほど健全なもんだったんだからな! 変な言い方すんな!」

「とにかく、昔の話だから」


樹へのフォローを無理矢理切り上げて、お兄ちゃんにターゲットを戻す。


知られたくない過去をここまで赤裸々にされて、黙ってられるもんか。



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