ジュリエットに愛の花束を。


言い切ったあたしに、お兄ちゃんは声を失ったように黙る。


それはやっぱりあたしが言った言葉に言い返せないからだと思って、やってやったと心の中でガッツポーズをして……。


でも、やけに落ち込んでいるお兄ちゃんに気付いて、顔をしかめた。

まるで、魂の半分が抜けちゃったような……。

静かに落ち込むお兄ちゃんがあまりにらしくなくて、こっちが動揺してしまう。


図星をつかれたって、ここまで落ち込むお兄ちゃんじゃないのに。

……おかしい。


「……そうだよ。それを、ずっと後悔してたんだ……」


予想もしてなかったお兄ちゃんの言葉に、一瞬びっくりして……でもすぐに聞き返す。


「後悔って……だって、里香さんとは大恋愛で……」

「違う。里香との結婚は後悔なんかしてない。結婚するなら里香しかいないと思ってたし、それは今でも変わらない。

真人の事だって、誰よりも可愛いと思ってるし、里香と真人を一生守って生きたいと思ってる」

「じゃあ……なにを後悔なんか……」

「……おまえだよ」

「え、」


お兄ちゃんは、開いた膝にそれぞれ肘をついてあたしを見つめた。

困ったような……、つらそうに歪めた表情で。




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