ジュリエットに愛の花束を。


「おまえは……俺に彼女がいる間だけ、男と付き合ってたし。それに、おまえは言葉こそ素直じゃないだけで、態度は素直だから。
もしかして……って気持ちはずっとあった。

それが確信に変わったのは、俺の結婚話におまえが家出した時。

……そこで初めて後悔したんだ。
もしかして……ってずっと気付いてたのに、なんでもっと慎重に扱ってやれなかったんだろうって。

両親もほとんどいないこの家から俺が出て行くってだけで、瑞希にとってはつらい事なのに……それに加えて、気持ちまで傷つけて……。

子供が出来た事も、里香との結婚もこれっぽっちも後悔してない。
言い訳がましく聞こえるだろうけど、きちんと避妊してたんだ。

それでも、俺達のところにきてくれた真人は、本当に運命だと思ってる。
俺のプロポーズに涙をこぼして笑顔でうなづいてくれた里香にも、本当に感謝してる……。

……ただ、おまえの事だけが、ずっと気がかりだったんだ。
傷つけたまま家を出た事……本当に申し訳なく思ってる」

落ち着いた声で話しながらうつむいたお兄ちゃんに、あたしは言葉を失う。


お兄ちゃんを好きだったのなんて、あたしの勝手な片思いで、お兄ちゃんがそこまで責任を感じる必要なんてどこにもないのに。

なのに……そんな事を思ってくれていたお兄ちゃんに、胸の奥が熱くなった。



< 337 / 355 >

この作品をシェア

pagetop