ジュリエットに愛の花束を。
「……だけど、家庭を持った以上、いつも瑞希の傍にいて瑞希を見守る事なんてできなくて。
俺がいなくちゃ、里香と真人は暮らしていけないから……だから、気になりながらも何も出来なかった。
俺が一番に守らなくちゃいけない人達を放っておくなんて、できなくて……。
でも、そんな俺に気付いた里香が、「ちゃんと向き合ってきて」って。
本当に里香は俺にはもったいないくらいの女だよ。
俺の気持ちなんか、全部お見通しだった」
いつかの里香さんとの会話が思い出される。
あの時言ってた、「思い残してきた事」はあたしの事だったんだ……。
「……あたしのせいで、」
「違うよ。これは俺の問題だ。
親代わりにおまえを育てたんだから、おまえが間違った道を行こうとしたら止める義務がある。
それを途中で放り出した自分を後悔してたんだ。
おまえの気持ちを見て見ぬふりした事にも……ごめんな」
あたしをじっと見つめたまま言うお兄ちゃんに、じわじわと浮かんできた涙が目じりにたまる。
そんな涙を拭くことも忘れて、あたしもお兄ちゃんを見つめ返す。