ジュリエットに愛の花束を。
「いいから何?」
「『ロミオとジュリエット』」
「え、」
「やたらと縁があるな。プロポーズする時にはあの出窓から瑞希を盗み出すか」
ふざけて笑う樹を、あたしも笑いながら見つめる。
「大丈夫だよ。お兄ちゃんは樹を殺そうとまではしないから」
「考えただけで怖いし。きっと俺の一番の試練だな」
苦笑いしてため息をつく樹に、笑顔で答える。
「大丈夫。いざとなったら、窓から飛び降りてでも樹のところに行くから」
開いた窓から差し込んでくる光。
おそろいの指輪が、それぞれの指に光った。
『ジュリエットに愛の花束を。』
―FIN―