ジュリエットに愛の花束を。
樹の事を認めてもらえるいいチャンスだったのに。
ため息をつきながらリビングに入ると、ダイニングテーブルの上にご飯が用意されている事に気付く。
あたし用のお茶碗が置いてある横にあった炊飯器を開けると、ホタテとカニの炊き込みご飯が湯気を上げた。
「炊き込みご飯……」
缶詰のホタテとカニを入れた炊き込みご飯は、お兄ちゃんの得意料理で……二年ぶりに見たご飯に、胸が苦しくなる。
お兄ちゃんが出て行ってからも、自分で何度か作った事はあったけど、少しだけ味が違っていて。
味もだけど、誰が作ってくれたかっていう事も大きく関係していた気がした。
お茶碗によそって、一口食べてみる。
あったかいご飯が、なんだか涙腺を刺激して……思わず泣きそうになった。
お兄ちゃんが出て行ってから二年。
誰かに作ってもらったご飯を家で食べるのなんか、久しぶりで。
お兄ちゃんが家を出たのと一緒に、一人の家の寂しさに耐え切れなくなったあたしは、樹の部屋に逃げ込むようにして半同棲生活を始めた。
だから、今日、家に当たり前のように着いていた灯りに、すごくすごく……嬉しくなった。