ジュリエットに愛の花束を。
微妙な気持ち
「あ、瑞希っ! 寄り道してくんなって言っただろうがっ!」
帰ってすぐに飛んできた声に、あたしはため息を一つ落としてから口を開く。
「寄り道してないよ。
色々と事情があって、どうしても行かなくちゃならない場所があったから行ってきただけ」
「それが寄り道とどう違うんだ」
「だから、遊びたくてどっか寄ってきたわけじゃないし。
文句言うなら松永に言ってよ。松永がプリンなんかよこさなければすぐ帰ってきたかもしれないのに。
……あ、もしかして松永ってお兄ちゃんの差し金?」
ありえない行動も、その理由なら納得できる。
お兄ちゃんが裏で松永に命令してるのかも。
樹と別れさせたいがために、松永に裏金を……?
そう思って聞くと、すきやきの準備をしていたお兄ちゃんは眉を潜めた。
「俺はプリンぐらい素直に渡せる。妹相手に照れるわけないだろ」
「……だよね」
話の通じていないお兄ちゃんに適当に答えて、ダイニングの椅子に座る。
ぐつぐつと音を立てて煮えているお肉や野菜が、魅力的な匂いであたしの食欲を誘った。