ジュリエットに愛の花束を。
「本当に可愛いーっ!」
「分かったから。ギブギブ」
「でもさー、瑞希の事だから、その事、椎名先輩に言ってないんでしょ」
皐の絡まった腕を解きながら、完全に乱された髪を手ぐしで直す。
「言ってない。……っていうか、別に心の底から信じてるわけじゃないし。
ただ、松永とそんな変な事になっちゃったら嫌だなってだけで……」
「瑞希さん」
「……やめてよ、さっきから『瑞希ちゃん』だとか『瑞希さん』だとか。
らしくないのは分かってるから」
「違う違う。あたしじゃないし。あの人」
裏庭が一望できる渡り廊下に差し掛かったところで皐の手を振り払いながら言うと、皐が裏庭の方を指差して言う。
その先を見ると……。
「あ……アリサさん」
あたしを見てにっこりと微笑むアリサさんの姿があった。
今日は、白いTシャツの上にブラウンのカーデガン、それにジーンズ姿。
髪は左側で、淡いピンクのシュシュで緩く一つにまとめていた。