ジュリエットに愛の花束を。


「アリサ? ……他には何も言われなかったか?」

「んーと、家事は女がするもんだって言ってたけどそれくらい」


アリサさんの名前に明らかに気分を悪くした様子の樹に、もう一度聞く。


「ねぇ、あたし、男っぽいの? 樹は一緒にいてそう感じたりする?」


こうも気になるのは、お兄ちゃんとの生活が長かったから。


ほぼお兄ちゃんに育てられたようなあたしは、もしかすると、自分でも気付かないうちに男っぽく育ってるのかもしれないし。

だから、アリサさんの言葉にショックを受けた、とかいうよりは、自分が気付いてないだけなんじゃ? っていう不安が大きかった。


じっと見上げるあたしに、樹はふっと笑みを零して……あたしに近づく。

そして、スカートから覗く足に手を這わせた。


「女だよ。瑞希は」

「分かってるよ、そんなの。そうじゃなくて……っ、や、ちょっとっ……!」

「言ってんじゃん。俺には松永とどうこうなる趣味はないって。

女しか恋愛対象に見れねぇよ」

「だからそういう事じゃなくって……い、つきっ、…触ん、ないで……っ」


樹がかもし出す雰囲気に呑み込まれて、流されそうになる。

身体を伝う微弱な快感に、抵抗の意思が弱まる。




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