ジュリエットに愛の花束を。
顔半分だけ振り向くと、こげ茶色したさらさらの髪に少しだけ隠れた樹の茶色い瞳が見えた。
浮かべるのは、優しい微笑み。
「……」
自他共に認めるじゃじゃ馬なあたしを扱う樹の二面性は……
未だに攻略できてない。
普段なら言える減らず口さえも、樹のかもし出す雰囲気に負けそうになる。
「瑞希だったらどうする?
このドラマみたいに、彼氏が遠くに任務に行っちゃうとかだったら。
この女優みたいに泣く?」
……任務。どんな時代設定?
「俺が遠くに行っちゃうとしたら……泣いて止める?
それとも、ついてくる?」
樹があたしの顔をじっと見つめる。
……意地悪に歪めた笑みで。
からかう時に必ず見せる笑顔に、あたしは首を捻る。