白き砦〈レイオノレー〉
3 夜会の出来事
無数に瞬く燭台の明かりに照らされ、華やかに綺羅を飾った王宮の大広間は、貴族たちで身の置き場もないほど賑わっている。
彼らは思い思いに趣向を凝らした夜会服に身を包み、祝賀の宴席に連なっていた。
ファンファーレが響き渡り、お触れが国王一家の到着を告げた。
広間の扉が開かれて、金百合の旗をあしらった長槍を掲げた近衛銃士に先導され、国王一家が入場してきた。
今宵の国王は、金繻子の豪華な縫い取りの上着を羽織り、帽子には駝鳥の羽根飾りをな
びかせた、たいそう煌びやかないでたちである。
隣をゆくはずの王妃の場所は空いたままだった。
そのあとに、真っ白いレースのおくるみに巻かれ、若い乳母に抱かれて、生まれたばかりの王太子が入ってきた。
次が王の弟オルレアン公とその妃、そして行列の最後を、王室付きの侍女たちが華やかに締めくくった。
人々は国王のために中央の道をあけ、身分の順に上座から並んで礼をとった。
国王は段を上がって玉座に座り、王太子は脇に設えられた揺りかごに寝かされた。
その場所は、つい先日まで第一王位継承者であった、王弟オルレアン公の占めていた席である。
王弟は一段下がった新しい自分の席に着く前に、揺りかごにチラリと一瞥くれた。
枢機官職の赤い法衣をまとった宰相リシュリューが、国王に近づいて耳打ちした。
「王后陛下におかれましては、おかげんが麗しくあられないのでしょうかな?」
国王は、王妃のことを訊かれるときはいつもそうであるように、ぶっきらぼうに答えた。
「けさ床払いをしたと聞いたから、おっつけ姿を見せるだろう。それより王太子を狙った賊の行方は知れたのか?」
「はい。たった今入りました報せによりますと、賊たちは過ってランスロット公爵の館へ侵入し、公爵に成敗されたとか」
それを聞いて国王はぱっと顔を輝かせた。
「公爵が成敗してくれたとな?」
彼らは思い思いに趣向を凝らした夜会服に身を包み、祝賀の宴席に連なっていた。
ファンファーレが響き渡り、お触れが国王一家の到着を告げた。
広間の扉が開かれて、金百合の旗をあしらった長槍を掲げた近衛銃士に先導され、国王一家が入場してきた。
今宵の国王は、金繻子の豪華な縫い取りの上着を羽織り、帽子には駝鳥の羽根飾りをな
びかせた、たいそう煌びやかないでたちである。
隣をゆくはずの王妃の場所は空いたままだった。
そのあとに、真っ白いレースのおくるみに巻かれ、若い乳母に抱かれて、生まれたばかりの王太子が入ってきた。
次が王の弟オルレアン公とその妃、そして行列の最後を、王室付きの侍女たちが華やかに締めくくった。
人々は国王のために中央の道をあけ、身分の順に上座から並んで礼をとった。
国王は段を上がって玉座に座り、王太子は脇に設えられた揺りかごに寝かされた。
その場所は、つい先日まで第一王位継承者であった、王弟オルレアン公の占めていた席である。
王弟は一段下がった新しい自分の席に着く前に、揺りかごにチラリと一瞥くれた。
枢機官職の赤い法衣をまとった宰相リシュリューが、国王に近づいて耳打ちした。
「王后陛下におかれましては、おかげんが麗しくあられないのでしょうかな?」
国王は、王妃のことを訊かれるときはいつもそうであるように、ぶっきらぼうに答えた。
「けさ床払いをしたと聞いたから、おっつけ姿を見せるだろう。それより王太子を狙った賊の行方は知れたのか?」
「はい。たった今入りました報せによりますと、賊たちは過ってランスロット公爵の館へ侵入し、公爵に成敗されたとか」
それを聞いて国王はぱっと顔を輝かせた。
「公爵が成敗してくれたとな?」