不器用な愛で、意地悪なその唇で。
◆
今日の放課後は、静かだった。
──何故なら千架くんが、教室にはいないから。
…あれからずっと目も合わせてくれなかった。
話しかけてもくれなければ、
見てもくれなかったと思う。
──仕方ないよね。
…どうせ今日だって
ほかの女の子たちと遊ぶんだろう。
でも遊ぶときはいつも
あたしに言って行くのが千架くんだったから。
…もしかして今日は来ないかもしれないけど待っていよう。……そして、謝りたい。
口下手でもいい─千架くんが大好きなんだってちゃんと千架くんに、言ってあげるの。
◆
ガタリ、と何かが動いた音がした。あたしはその音に重いまぶたをふ、っとあげた。
……あれ、寝ちゃってたんだ…あたし。
起き上がり、窓を見る。…もう暗くて時刻は7時。真冬のこの時期は暗くなるのも当然早くて。
…結局千架くんは来てはくれなかった。そう思いながらも音がした扉の方へと視線を向ける。
「───あ、」
「…まだ、いたのね。」
音は扉の開いた音で、扉を開けたのは──今朝 千架くんと手を繋いで学校に向かった…由佳さん。
なんでココにいるんだろう、そう思った。…千架くんと帰ったんじゃないの?と思うと…少し、妬けた。