不器用な愛で、意地悪なその唇で。




「…千架はこないわよ。」

「…しっ、知って…ます」



強気でそういわれてしまうと、なぜか頑なな敬語になってしまう。…立っていたら、へっぴり腰なんだろう。



「じゃ、なんで帰らないのよ。」

「ね、寝てたん、です。」



あぁもう自分にあきれる。なんでこんな怯えているんだろう。……この人だから怯えてるんだとはわかるけど。



「ふぅん?じゃぁいい機会だし、
 単刀直入に言うけど…
 …千架と別れた方がいいと思うわよ。」




───あぁ、とそう思ってしまった。

察していたから。いつかは、取り巻きの誰かには言われるんだろうなーって。…でも言われた相手がこの由佳さんじゃ、……ちょっと、キツイ。



“はい!?それでも彼女なの?!貴女って──”



朝、由佳さんに言われかけた言葉が、脳内に響き渡る。正論だったから、よけい……痛い。





< 11 / 41 >

この作品をシェア

pagetop