不器用な愛で、意地悪なその唇で。






「千架がかわいそう!
 彼女である貴女に何も求められないで!」




…全部、全部全部全部ぜんぶ。全部、正論。

すべてに奥手な、あたしのせい。…わかってるもん。

でも……言える勇気があたしにはない。

だけど…こんなあたしにもこれだけは言える。


あたしはふ、と目の前に立つ由佳さんを見る。

だけどまっすぐは見つめられなくて少し瞳を伏せた。



「…別れろなんて、貴女に言う権利…ないです」

「………!」



他人に言われる筋合いはない。それは恋敵だって同じだと思う。だってつながっているのは、あたしと千架くん、だから。




「別れる別れないを言う権利は
 千架くんにしか、ありません……!」




そしてその権利は、あたしにもある。

あたしは言わないと、決めているけれど──…






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