不器用な愛で、意地悪なその唇で。
◆
次の日の朝、千架くんはいつもどおりに迎えに来てくれた。…昨日メールで“放課後はごめんね”って謝ってくれて。
「よし。」
千架くんとあたしの間にある玄関のドアに向かって意気込み深呼吸をする。そして思い切り、ドアを開けた。
「お、おは、よう!千架、くん。」
いつもは千架くんからの挨拶を、自分からしてみる。すると案の定、千架くんは驚いた表情。
「あ、うん。おはよう、春。」
だけどすぐ戻って、
笑顔でそう言ってくれた…よかった。うん。
◆
「今日は髪型、違うんだ。」
一緒に登校中、千架くんがあたしにそう言ってくる。…気づいてくれたことが嬉しくて、あたしは頬に熱が灯るのを感じながらも微笑んだ。
「うん、ちょっと…頑張ってみたの!」
笑ってそう言うと、なぜか千架くんは困った風に笑う。それにちょっと焦りが出てあたしは慌てて口を開く。
「ももっ…もしかしてどこかおかしい、かなっ!?」
視線を泳がせながらも髪を手で押さえる。髪型はお団子ヘアに近い髪型で崩れる可能性は十分にある。
「ううん、可愛いと思うけど?」
にっこりと笑顔で言われてあたしは内心ほっとし腕を下ろす。…でもさっきの、曇ったような笑顔は…何?