不器用な愛で、意地悪なその唇で。






「千架ぁあー!」



笑い合うあたしたちの背後から、昨日と同じような声。…この声は、間違いない。




「由佳ちゃん。」



由佳さん。…昨日での今日だから少したじろってしまう。…だめだだめだ。あたしは千架くんの彼女なんだから、ちゃんとしなきゃ。



…っていうか、何で毎日毎日くるんだろう。

…いや、それはたぶん由佳さんが本気で…。



「おはよう千架に…え、貴女…」



由佳さんが今日のあたしの容姿に驚き大きく目を見開く。地味は地味なりに、地道な努力したんだもの。



「っ、ね。千架。今日も手、つないでもいい?」

「………!」



あたしから悔しそうに目を背けたあとにそんなことをいう。…っていうか、昨日の今日でまだいいますか貴女は!



「うん、いいよ」



そう思って心の中では由佳さんに刃を向けるも、次の千架くんのうなずきに、あたしは言葉を失う。



“うん、いいよ”?



今、うなずいたの、千架くん?


あたしはゆっくりと千架くんへと視線をやる。…そこには“由佳さんに、手を差し伸べてる千架くん”がいて。




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