不器用な愛で、意地悪なその唇で。
目を疑った。…どうして?
どうして今日は、何も聞いてくれないの?
なんで彼女の目の前で堂々と
─ほかの人と手を繋げるの?
視界がぼんやりとゆがんだ。
今朝頑張った髪のセットも
今ドキ風にした制服だって
全部、千架くんのためにやったことなのに。
何も言わないで前を進む二人に、
あたしは立ち尽くしたまま。
あたしは千架くんの後姿を見ながら思う。
──振り向いてもくれない千架くん。