不器用な愛で、意地悪なその唇で。









「千架ぁ♪今日はドコ寄って帰るぅ?」


放課後、バッグに荷物を詰めているといつものように女の子たちがやってくる。


「そうだね。どこよって帰ろうか?」


俺が笑顔でそう答えると女の子たちはいっそう甲高い声を上げて喜ぶ。俺は少し視線を泳がせた。

……春が、いない。いつもなら自分の席で遠くから俺のこと、伺ってるのに。

これじゃこの女の子たちといる意味ないよ?…俺は春に振り向いてもらいたくてしてるのに。



「千架ぁあ゛あ゛あ゛!」



俺がそうつまらなそうな顔をしても尚、視線を泳がせ春を探していると背後からのぶとい声が響く。

コレは女の子──っじゃなくって。



「なぁに由希。まだ俺に説教?」



ぜぇぜぇと息を俺の前で整える由希はすごくあせっているようで、ふと脳裏に何かが突っかかる。


「おまっ…そんな春妬かせてる行為してる場合じゃねぇぞっ!反対にお前が妬く番だぞおい!」

「…………は?」


由希の言う意味がわからない。…俺が嫉妬する番?どうして?俺はしないよ。──だって、春は…


「今日の春はいつもと違うだろうが!前は控えめな地味とか言われてたけど!今はむっちゃ!めっちゃ可愛くなってんだろ!?だから──あぁっ、とにかく来い!」


ぐいぐいと手を引かれ走らされる。俺は走りながらも春のことをぼんやりと考えていた。




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