不器用な愛で、意地悪なその唇で。
春は別に可愛くなくたっていい。
─みんなが知らない春の顔を俺が知ってればいい。
─俺の好きな顔を俺だけに見せてくれればいい。
…俺は春の少し恥らった、
でも赤く微笑む笑顔が好き。
◆
「あ、いた!ほら見ろあ・そ・こぉお!とめられるのは彼氏のお前だけだ!イケ!そして謝れ!」
由希がそう奇声をあげ、夕暮れの玄関を指さす。…そこには困った顔してる春と、笑ってる男子が二人。
「……何してんの?」
俺は結構離れてるけど、目の前の3人を疑視しながらそう口からこぼす。それに由希は反応して。
「何してるって…普通に春を放課後のお出かけにさそってんだろ!まぁ手短に言うならお前と取り巻き女子みたいな感じだな。…無理もねぇ、今の春可愛いし」
ぼそりと悔しそうに、だけども悲しそうに由希がそう言う。…ふーん、そっかぁ……
モヤモヤと、心の中に黒い霧が生まれる。…あぁ何?コレが嫉妬ってやつ?
「…大丈夫だよ。春は断るし。」
俺はそう言って立ち上がり春たちに背を向ける。だけども由希の"あ!"という吃驚(きっきょう)した声に再度振り返った。