不器用な愛で、意地悪なその唇で。
「────!」
俺は柄にもなく、目の前の光景に見入ってしまった。……春が笑いながらさっきの男子二人と校舎を跡にする姿。
「ぅわ、!行った!いたいた!早く止めに行け千架ぁ!止められるのはお前だけなんだってば!」
……止め、に行きたい。春は俺のなんだよ、ってあの男子二人に言ってやりたい。…だってあの男子二人だって、俺と春が付き合ってること、知ってるでしょ?
でも動けない。…なんで?
───あぁ、そっか。
“春が楽しそうに、笑ってるから”
…追えないんだ。
俺といるときよりも嬉しそうな笑顔で笑うから。
「お前は不器用すぎんだよっ!なんでお前が“受け身”になってんだよ!両方とも受け身になってたら進展するもするわけねぇだろ!彼氏ならわかってやれよボケ。」
由希の言葉が、すぅっと耳に入ってく。そんな言葉の後にまた、あの言葉が。
“春の気持ちになったことある!?”
──また、この言葉が、脳内リピートされて。不意にドクリ、と心脈が高鳴った。