不器用な愛で、意地悪なその唇で。
「由佳…さんの所、行くんじゃないの?」
瞳を伏せて、顔をうつむけて。今にも泣きそうな顔で俺にそう言う。…あぁ。
そっか。そういうことか。
ごめんね春…だけどそんな春が、愛しくてたまらないのは───なんでかな?
笑った顔も好きなのに、その顔も…好きなんだ。
「由佳ちゃん?行かないよ?どうして?」
わかりきったことを、そう聞く俺はどれほど憎たらしいヤツなんだろう。…まだ春を泣かせたいだなんて。
……もっといろんな表情を、見てみたいなんて。
「だって…もっ…あたしのことっ……」
一粒、二粒と涙を流し、はっとし周りを見る春。…そういえば、若干二名の男子はまだいたんだっけ?
「──あぁ君たち。今取り込み中だから先帰っててくれる?…ってか春は俺のだから、もう安易に手ぇださないでね?」
にっこりと、だけど言葉は強めにそう言う。すると男子二人は言い返せないのか二人で早足で帰っていく。