不器用な愛で、意地悪なその唇で。
「──え?」
ゆがませていた表情を、俺のその一言を聞いて驚きの表情へと変える春。…状況が飲み込めてない?
「好きなんだよ春だけが。
由佳ちゃんなんて、
他の女の子なんてどうでもいいくらいに。
離してなんて、あーげなーいよ?」
にっこりと笑ってそう言って、しまいには舌をべっとだす。すると春の瞳からは涙が溢れ出していて。
「…うそ。」
「嘘じゃないよー?」
「……だって千架くんはみんなの千架くんだもん」
「えー?いつそんな法律みたいなの作られたのー?
俺は春だけの俺だったんだけどー…
今の女の子って怖いねぇ?」
「…あたしのことなんて見てくれなくて
他の女の子と手を繋いで行っちゃうし……」
─その台詞を聞いて言い返すのをやめた。
そうだよ俺。春いびってる場合じゃないよ?
俺だって、
──春に言わなきゃいけないこといっぱいある。
「…っ、あたしがこんな性格だから、だよねっ?
不安だったよね?だから今もそんなこと……
だから由佳さんとっ……」
まだ俺の言葉が信じられないのか言葉にならない言葉を、何もかもが抜けてる、でも彼女が重要だと思う言葉だけを俺にぶつけてくる。
…だからこそ、わかる。
“だから今もそんなこと”…俺が好きっていったことを嘘だと思って、受け入れようとしてなくて。
“由佳さんと”…このごろの朝ずっと由佳ちゃんがいたし…俺が手を繋いじゃってるからさらに誤解して。
──春をここまで追い込んじゃったのは、
間違いなく、俺だね。