不器用な愛で、意地悪なその唇で。
「春、はる。聞いて?」
「や、ヤダ。聞きたくない、ごめっ……」
俺って愛されてるんだなぁ……
“別れ”を告げられると思って恐れて俺を見ないとしない可愛い彼女。
目の前で耳をふさいで瞳をきつく閉じる彼女に俺は切なげに苦笑し、
春の頬を自分の手のひらで優しく包んだ。
「っん、」
そして春を落ち着かせるために、優しく唇に、キスを落とす。久しぶりのキスで柄にもなく緊張した。
「え…?ぁ」
唇を離して、まっすぐに春を見つめる。動揺していた春の動きはぴったりと止まっていて。
逆効果だったかも知れないと思いながらも、俺は春に向かって口を開く。
「春、ごめんね。不安にさせて。
痛かったよね?女の子と俺が一緒に帰るの見て。
怖かったでしょ?帰り、一人で帰るのは。
辛かったよね?…ほかの女の子の手を取って
春を、置いてけぼりにして…ごめんね。」
抱きしめて、頬をなでてそう言って。
春をもう一度見るとその瞳からはポロポロと再び涙が溢れ出してきて。