不器用な愛で、意地悪なその唇で。








「それと、無理しておしゃれしなくてもいいから」



夕暮れ、久しぶりに二人で手を繋いで帰るとき、俺は気になったことを春に言ってみる。



「え、別に無理してなんかじゃ…」

「いーから。そのままの春でいて。」



否定しようとする春と繋いでいる手をぎゅ、と強めに握ってそう言う。


…気づいてくれると嬉しいんだけど。

俺たちはまだ不器用な恋愛しかしてないから

今はまだ、言葉で伝えるしかない。




「俺ももう女の子と遊ばない。ずっと春と朝は行くし放課後は帰る。…でも俺だって初めの方は女の子たちに誘われると思うし、春だって"その格好"だったら他の男の子たちに誘われちゃうと思うし?」


「え、だってそれじゃ千架くんにつりあわな…」


「そんなの関係ないから。春のいいところなんて俺が知ってればそれでいいんだからね。…わかってる?

 春は今、俺を妬かせてるんだよ?」



俺がそう素直に言うと、春は呆気にとられた顔してその場に立ち止まる。…え、俺ちょっと今格好良かった気がするんだけど。


何?頬も赤らめてくれないの?春のくせに。





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