不器用な愛で、意地悪なその唇で。





「手、つないでもいい?」


にこにことあたしにそう言う。


なんでそんなに笑顔で問いかけてくるの、意地悪。 

なんで断ろうという意思を、いつもいつも貴方は。

────持っても、くれないの。


…それであたしに振るなんて、とてもずるい。



「わかっ…ないっ!」



あたしが必死になってそう言うと千架くんは拍子抜けした表情になる。

“繋がないで”“ヤダ”

……そう言いたいのに厄介な性分が邪魔をする。


あたしがそう言い放った後、周りの景色さえも、一瞬しん、となる。顔を上げてみると目の前の千架くんや傍にいる女の子の表情が冷めた感じになっていて。




「……ふーん……そっか?」

「はい!?それでも彼女なの?!貴女って──」

「…いいんだよ。由佳(ゆか)ちゃん…行こう?」




あたしを責めようとする女の子──由佳さんを止めて千架くんは笑顔で"由佳さん"に手を差し伸べる。


──ズキリズキリ、とそんな音があたしの身体から発せられたような気がして…泣きたく、なった。





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