銀の怪盗
「え、ええ…」
レスタード警部!?
内心の困惑をかろうじて押しとどめる。
そうとも知らず、レスタードは優雅な物腰で椅子を引いた。
「僕の顔に何かついていますか?」
そう言われて、私はようやくレスタードの顔を見つめていたことに気付く。
「あ、いえ」
慌てて視線を外し再び窓の外へと目を移すと、彼が不思議そうな表情をしたのが見えた。
銀髪を晒しているのだからあまりに挙動不審な態度をとっていれば気付かれてしまう。
分かってはいるのだがそれはなかなか難しいことであった。
万が一レスタード警部が私のことを既に知っていたら…
そもそもあの美術館で対峙した警官が誰にも自分のことを言っていない方がおかしいのだ。
これは…罠?
そう思わずにはいられない。