銀の怪盗


それからは互いに何気ない会話をして過ごした。



「あなたの名前は?」


「レスタード・クラウスと申します」


「そう。私は――シルフィ」


「シルフィ…可愛らしい名前だ」


か、可愛らしい…って



その言葉に思わず顔を赤く染めてしまう。



「あ、いや…その」


思わず本音を出してしまったのかレスタードまで赤くなり、二人の間にしばらく沈黙が続いた。




何となく目の前の端正な顔を見ることが出来ずふと窓の外に視線を移して気付く。


「そろそろ行かなきゃ…」


闇色に飲まれていく橙は、ここに来て結構な時間が経ったことを示していた。



「もうこんな時間でしたか…」


上品な腕時計を確かめて驚いた表情をするレスタード警部。



「今日は楽しかったわ。」


出来ればもう少し二人で話していたかったが、さすがにこれ以上は憚られる。


席を立とうとするシルフィを、しかし彼は引き留めた。


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