銀の怪盗
そして意味もなく足はそちらに向かっていた。
理由などない。
警備が完全に出払ってしまった館内に特別注意は必要ないだろう。
静かな一人だけの空間に浸りたいのかもしれない。
もしくは警官の意表をつく行動にただ満足感を得たいだけなのか。
自分でもよく分からない、しかし“何となく”という本能に従って足を進める。
しなやかな、そして軽やかな動きでもって夜の空を堪能すれば、少々冷たい風に四肢を撫でられた。