銀の怪盗
「…待てっ!」
踵を返し全力で駆け出すと、同じくして相手も追ってくる。
警戒を怠っていた自分に心の中で溜息を吐くと、ひたすらに出口へと走った。
ああっ…もう。
いくら運動神経に恵まれているからとは言え男の能力には僅かに劣り、少しずつ距離が縮まっていくのが分かる。
舌打ちして地面を蹴ると息を切らせながら目の前の扉を確認した。
あと少しっ…!
しかし伸ばした手が取っ手にふれる前に、その手を強く掴まれた。