碧
日常と、崩壊
朝になれば、小うるさい母親に布団をはがされ目覚め、バスに乗り、登校。休憩時間は友達と昨日のドラマや番組について論議を交わす。授業は、河童のような禿げかたをした教師の目を盗み、秘密の手紙をやりとりする。夕方になれば、友達に手をふりバスに乗り込み、帰宅する。夜ごはんは母が腕をふるった、特に豪勢とはいえないけれど、どこか暖かいごはんを家族三人で囲って食べた。日が暮れれば、気分で入浴剤を投入したお風呂に入って、歯磨きをしつつ流行りのドラマに涙したり笑ったり。それから勉強を少しして、飽きたころにいつのまにか眠っている。そしてまた日は昇り、母親に起こされ、私の一日は始まる。そんな日常を繰り返していた。
そんな日常がつまらないわけでもなかったし、中々に良い両親と友人たちに恵まれたものだったから、特に不満もなかった。
ただ何となく生活をしていた。
そのことに何の違和感もなかったし、わたし自身がいたって普通の人間なので、この生活が急激に変化したりすることはないだろう、そう勝手におもっていた。
しかし日常を変える術は、意外なほど身近に存在しているものなのだ。不思議の国のアリスの白兎しかり、となりのトトロしかり。
普通の人が気づかない場所にひっそりと鍵は隠れている。手を伸ばせば、それはいとも簡単に手に馴染んでしまう。わたしはそれを、偶然にも見つけてしまっただけなのだ。