オフィスレディの裏の顔
「水沢さん、今日は遅くまで付き合ってくれてありがとう。」

「いいえ。私カラオケは好きですから。」

「歌上手だもんね。」

でも私の本心は、眠気より何より狭い部屋でタバコを吸われ、洋服やバッグに臭いがついたことと、喉が痛くなったことに少し憤りを感じていた。

「あの〜、鶴見さんは結婚してると聞きましたけど、子供いるのでしょうか?」

「いや、いないよ。なんで?」

「朝帰りして大丈夫なのかな・・・」

「あー。これ内緒ね。うまくいってないみたいだよ。離婚話も出てるらしい。」

「・・・」

私は返す言葉もなく、黙って窓の外を見ていた。すると携帯にメールが入った。

「今日はありがとう。吉田さんとタクシー大丈夫?」

マリコからだった。私はそのメールに返事をし、ふと吉田さんを見ると、ぐったりと椅子にもたれ目を閉じていた。何か話かけないとまた寝てしまうかもしれない。でも話題がなかった。残業もしてたし疲れてて可哀想だなとそのままにしてあげた。

10分くらいで私の家についた。

「吉田さん、私降りますよ。」

声をかけても起きない。何度か体を揺らし、運転手さんも声をかけて下さりやっと起きた。

「あ、ついた?」

「はい、私降ります。吉田さんの家はどちらでしたっけ?運転手さんに伝えないと。」

「では僕もここで降ります。」

?そう聞く前に彼は料金精算を始めた。
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