オフィスレディの裏の顔
タクシーを降りると、なぜか吉田さんは道路に座ってしまった。

「吉田さん?大丈夫?」

しゃがんで彼の顔を覗きこむと、彼は大丈夫だよと言わんばかりの態度で私の肩を叩いた。

「水沢さんの家はこの近くですか?」

「ここのすぐ裏だけど・・・」

もしかして私の家に来るつもりなのだろうか?好きでもない男を家に入れるつもりはない。どうやって帰そうか必至で考えていた。

「僕は大丈夫ですよ。ここで少し休んでから帰ります。」

「でも・・・」

「大丈夫。お疲れ様。」

彼は私を追い払った。私は家に帰ったが、玄関の鍵を開けながら酔っ払いを置いて来てしまった自分の冷たさに情けなくなり、バッグを置いて再び吉田さんのところへ戻った。彼は同じ場所で座って寝ていた。

「吉田さん?」

彼の体を揺らし、頬をパチパチ叩いてやっと返事をした。

「ここどこですか?」

酔ってるのか寝ぼけてるのかわからない。とりあえずタクシーを拾って乗せることにした。

「タクシー拾いますよ?」

「いや、僕ちょっと歩いてあっちで・・・」

ろれつも回ってなく何を言ってるのか聞きとれなかった。とりあえずタクシーを拾い、運転手さんに手伝ってもらって彼を乗せた。吉田さんの財布を取り出し、免許証をみて住所を伝え、念のためタクシー代も先に渡して運転手さんに後のことを任せ私は帰宅した。すごく疲れた1日だった。
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