オフィスレディの裏の顔
 翌日帰りの車の中でも私はマナブとあまり話さなかった。鶴見さんが気を使ってマナブと男ならではの車の話をして盛り上がっていたけど、私は寝たふりをしていた。少しでも早く1人になりたかった私は、自宅まで送ってもらうのは悪いからと、マナブと一緒に電車の便がいいところで降ろしてもらった。そのあとすぐマナブと別れ、1人になってどっと疲れがこみ上げてきた。今回の温泉旅行で私が得たものは何もなく、逆に何かを失った気がした。

 一方でマリコたちは旅行後もしばらくはラブラブだった。まるで新婚さんのように出勤も帰宅もいつも一緒だった。

 そうして数ヶ月経過した頃、マリコたちはささいなことからケンカをしてしまい、しばらく私との会話にも鶴見さんの名前が出ない時期があった。その様子は数日後にあきらかになった。いつものように会社帰りに残業メンバーで飲みに行ったときだった。吉田さんが鶴見さんをからかい始めた。

「最近鶴ちゃんまた変なこと言い出してるんだよ〜。」

「なになに〜?聞きたぁ〜い!」

私も面白がって耳を傾けた。その日、マリコはケンカが原因で飲みに参加していなかったのでなおさら内容に興味があった。

「同じ人と2回結婚できるのかなぁ、とか言ってんだよ。」

「え〜!?それって別れた奥さんと寄りを戻すってこと???」

すると鶴見さんが口を開いた。

「そしたらバツイチの×はなくなるのかなぁ〜。」

みんなが大笑いした。

「そんな程度の決意で離婚なんてすんなよなぁ。」

吉田さんの言うとおりだ。話を聞いていると、前妻が復縁したがっていて、鶴見さん自身もそれも悪くはないと言った風だった。私はすごく迷ったけど、聞いてしまったからにはマリコに伝えなければならないと思い、帰り際にマリコへメールをした。
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