海風
 さて、これからどうしようか……。

 海に来ることしか考えていなかったため、着いてからの事は決めていなかった。とりあえず決めていたことは――


海に行く


海で飯を食う


海で泳ぐ


何か、思い出を作る


 ――ぐらいである。



 ……さすがに無計画過ぎた気がする。
 急にどうしようもない不安が沸いてくる。おれはキョロキョロとあたりを見渡した。

 その時、視界に人が映った。

 裸の女性だった。

「えー!」
 思わず変な声がでる。

 女性は砂浜の端にあるごつごつした岩場の上に立ち、睨むような真剣な表情で海を見下ろしていた。裸で。
「……」
 その姿は遠目でもすごく綺麗に見えた。別に裸でエロイとかそういうやつじゃない。純粋にカッコイイと思ったのだ。おれは魅いられたままその場で固まってしまった。
 ゴクリと唾を飲み込む。鼻血がでてないか確かめる。まだ、大丈夫だった。
 よく見ると、女性は右手に何かを持っていた。モリのように見える、と思ったが、モリも実際見たことがない事に気付く。
「何してんだろ……」
 気になり、近づいてみた。
「あっ!」
 いきなり、女性が跳んだ。
 そして吸い込まれるかのように、小さく音を発てながら海に落ちた。


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