キスの魔術師
体全体に、恭介の温もりが伝わってきた。
「…ハイジ……」
恭介が優しくあたしを包んでくれた。
…恭介の香りが、あたしの涙腺を弱くする。
ずっと、ずっとずっと我慢してきた涙。
だから、あたしは我慢した。
視界がぼやけたけど、涙は流さなかった。
「ハイジ、ごめん。……俺さ…」
あたしは大丈夫って言い続けてきたけど、恭介にはお見通しなんだね。
あたしは恭介の次の言葉を待った。
あたしはどんな言葉でも受け入れる。
恭介は、あたしの大事な人だから。
「俺さ、どうしてもアメリカ行きてぇんだ」