キスの魔術師
『えー!うれしいけど、理由になってなーい!』
「じゅうぶん!理由になってます!」
『でもさぁ……』
いつも恭介が払ってくれてるから、なんかすごく申し訳ない気持ちになった。
「いいから! たまには俺にかっこいいとこ見せさせてよ」
恭介はそう言って、あたしの頭をクシャっと撫でた。
そのしぐさや顔が、すごくかっこよくて……
『……そんなの…いっつもカッコいいし…』
あたしはボソッと呟いた。
「え? なんか言った??」
恭介は気づいていないようだ。
まぁ店の中こんなに騒がしいし。
つぶやくだけじゃ聞こえないか。