キスの魔術師
「えっと……恭介…?」
『よし。とりあえず家に入れて?』
「……ほんとにいいの?」
くそっ。
熱のせいでか、とろんっとした目でそう言われると、ぐらんとくる。
『ハイジがいいなら」
やっとのことで冷静にそういうと、ハイジは笑った。
「ふふっ。ありがと。じゃぁ入って?」
『おう』
…………………。
あ、ちょい待て。
これって、これって……
俺ヤバくね?
だって付き合ってる、俺の彼女と一つ屋根の下で二人っきりだろ?
……やべぇ。
俺、お兄さんとの約束守れねぇかも…。
そして憂鬱だった俺の心に、ドキドキが入ってきたのだった。