キスの魔術師
『よい…しょっと……』
起こさないようにそっとベッドに寝かせると、ハイジは寝言を言った。
「ダメー。恭介、あたしから離れないでぇ!!」
『えっ……』
今までのホワンとしたしゃべり方じゃなくて、ちょっときつくなったハイジの口調に俺はびっくりした。
「ダメ…。恭介……、あたしから離れちゃダメ……」
『ハイジ……』
気付けばハイジの目からは涙が流れ出てきていて。
「お願い……。あたしから離れないで……」
『ハイジ…』
俺は寝ているハイジを抱きしめた。
「恭介…。お願いだから、……あたしを一人にしないで……」
そう呟くハイジ。
俺はその言葉が、ものすごく心に焼きついた。