キスの魔術師
第6章 レクイエム
放課後、恭介が留学の件で職員室に呼ばれた。
恭介の留学…。
ちゃくちゃくと準備が進んでる。
そう思うと、未だに口先だけしか気持ちが整理されていないあたしは、置いて行かれた感じ。
「ハイジ、今日黒板消し係?」
ミミちゃんが黒板を指した。
そこには、6時間目にやった数学の方程式がびっしりと端から端まで…
『あ…そーだった』
あたしはしぶしぶ黒板を消し始めた。
小学生のころからずっと黒板を消すことが嫌いだった。
だって粉が制服につくんだもん…。
「ハイジ、ごめん!今、慎(シン)からメールあったんだけど、校門で待ってるんだ…」
『あ、ほんと? じゃぁ行きなよ!待たせちゃ悪いしね』
〝慎〟とは、ミミちゃんの彼氏のこと。
この2人は大人な感じの、憧れるカップルなんだ。