キスの魔術師
振り向くとそこにいたのは……
「…誰…ですか?」
知らない顔の男の人だった。
…いや、正確に言うと、話したことがなく名前を知らない人。
同じクラスではない。
廊下で2・3回あったことがあるかないかぐらい。
なんせ桜花学園は生徒数が多いからね。
「そーだった。はじめまして」
そう言って、男の人はニコッと笑った。
眼鏡がよく似合っている、世間でいう〝イケメン〟という部類に入ってるであろう人だ。
『は、はじめまして…』
「そんなにキョドらなくても大丈夫だよ」
『あ、いえ…。すみません…』
「ははっ。俺は尚樹(ナオキ)」
『…尚樹君?』
その瞬間、横から声が聞こえた。