ヘタレな彼が好き
正直、びっくりした。
あたしの周りを通った人はみんな、倒れて嘔吐したあたしを無視した。
元カレでさえだ。
まるでいないかのように。
救急車までは、必要なかったけど、
彼の心配してくれた心に、胸があつくなった。
泣きそうになっていたが、こらえていた涙腺がゆるみだした。
「…ゆりさん?」
彼の声を聞き、視界がゆらいだ。
あたしは彼の胸へ顔をうずめた。
拓海さんって、こんなにもあったかいんだ…
泣きながら、あたしは思った。
彼は黙ってあたしをうけとめてくれたのだ。