恋に恋した5秒前



最後のおにぎりを食べ終わったとき、横にいる恋をちらっと見た。

「おいひー」


…まだ食べてる。


彼女があまりにも美味しそうに食べるから、僕も思わず笑顔になる。

だけど、こんなに恋に近付くのは、今日で終わりにする。


じゃないと、触れたくなってしまう。

好きって気持ちのそれ以上を望んでしまう。


決めてたんだ、留学するなら、この気持ちは秘めておくって。



初恋は見事失恋で終わったけれど、またいつか誰かと恋に堕ちたら、今度は成功するよね。

だってそれは、2度目の恋だから。




「…恋、あのさ、」

「うーん、なに?」


凛とした彼女の瞳に、僕は問い掛ける。





「僕、留学するんだ。」


これで、いいんだよね。




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