恋に恋した5秒前
10 旅立ちサンセット
「おーい蓮ー、準備は出来てるのかー」
「出来てるよー」
父さんに返事をし、
僕は机と棚とベッドだけのすっからかんな部屋を見渡した。
荷物はもう向こうの寮に送っている。
明日から、僕の生活が変わるんだ。
最小限の荷物とお金、大切な三島高校のユニフォームだけを持って僕は家を出た。
「…蓮。」
「なに父さん」
空港へ行く為に、車に乗っていると、運転席にいる父さんが呟いた。
「…でっかくなって帰ってこないと、父さん達怒るからな」
…何も言わない背中。
隣の助手席には母さんがいた。
少し体が震えている。
「わかった。1年間頑張ってくる」
改めて決意する。
1年後、また三島に戻って、活躍して、全国へ行く。
それまで、アメリカでしっかりと学んで、「バスケ」ってものを盗んでくる。
「着いたぞ」という父さんの声で、僕は立ち上がった。