恋に恋した5秒前




「恋来なかったね。」


ふと隣に座った高橋が言った。
京平は気ままに空を飛ぶ飛行機を見ている。

意味深な顔。



「実は、悩んでたの、恋。あんたに言うかどうか」

「は?」

「解ってるでしょ」


「ああ…」

好きって伝えるってことか。


「なんで悩んでたかっていうとさ、」


僕は分かってしまったけれど、あえて何も言わなかった。

分かってる僕が悪いんだ。


「あんたと恋は両想いなの、二人共わかってるのになんで言わなかったの?外国行くって言ったって1年我慢すれば帰ってくるんでしょ?」

「レナ感情的過ぎだよ」

京平が高橋を止めた。

高橋も、僕と恋が付き合うこと、望んでたんだ。


「ほんっとに悩んでたの。最上が留学するのはバスケをしに行くからで、時差があるなか遠距離恋愛して、バスケは勿論学校で勉強なんて無理。ましてや最上だしって」

「あ、最後のはレナの本音ね」

「あ、ああ…」


「でも気持ちって抑えられるものじゃないじゃん!だから恋、体育祭の日に言うつもりだったの」

体育祭の日…


すると京平が僕に言った。

「…レン、オレさ、お前みたいに感情とか抑えられる人じゃないんだわ」


知ってる。

でも僕だって、今にも駆け出しそうだ。

座ってるから、頭で無駄だって分かってるから、抑えようとしてるから、抑えているだけ。


「行って来いよ。お前も行きてーんだろ?時間なんてどうでもいいじゃん。人生のほんの1ミリもないって」


京平、僕のこと分かってるんだな。

「何格好いい台詞言ってんだよ」

僕は嫌味っぽく京平に言う。


「何たってオレはお前の恋の先輩だし」

「何ソレ」

「レナは黙っててくれ。先輩の言うことは?」


そう聞かれて、僕は言った。




「絶対。」




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